あっという間に時は流れ、もう2005年のシーズンが解禁だ。どうも年々禁漁期間が短くなっているような気がす
る。もちろん実際に禁漁期間が短くなったわけではないから、歳をくうと時の経つのが早く感じられるというやつだろう。これが老化というものなのか。年々も
の覚えが悪くなり、さらに覚えてもさっさと忘れるようになってきた。脳の記憶が断片化し、どうでもいいような事柄はあらかた忘れてしまう。この現象が進行
すると、ついには昔話ばかりするご老体へと変貌を遂げていくのである。ついにボクも今年は39歳になるし、このまま絶命することがなければ来年は40歳に
なる。「四十にして惑わず」とは孔子の言葉だが、はたして40歳になったときに惑わずにいられるものか。おそらく40歳になっても戸惑いだらけのテンカラ
をするのだろうなぁ。
さて、テンカラの道具立てというのは極めてシンプルだ。竿、毛バリ、糸(ラインとハリス)、これだけしかない。これだけしかないのに、あれやこれやと悩
みは尽きない。なかでも竿というアイテムはやっかいである。なにせテンカラ道具の中では一番値が張るから、毛バリのようになんでもいいと割り切ることが難
しい。はっきりいって、キャスティングのコツさえつかめばどんな竿でも毛バリは飛ぶ。誤解を恐れずにいえば、100円ショップで売っているような棒切れ同
然の竹竿でもテンカラはできる。だからこそ奮発して高価な竿を買うからには、それなりの満足感が得られないと辛いよね〜。
で、今年は期待の竿が発売された。シマノの「本流テンカラZE」だ。4-4.5mのズーム仕様で、仕舞寸法も長い本流専用設計。テンカラ大王こと石垣尚
男教授が、2シーズンに渡って何本ものテストロッドを実釣で試してようやく完成した竿だ。間近でテストロッドを振るテンカラ大王の苦闘(してたかな?)を
見てきたこともあって、ボクにとってもこの竿の発売は本当にうれしい。張りのある胴調子であり、太目の穂先によって穂持ちに力がしっかり加わり、胴までグ
ンッとしなる。いうなれば郡上竿のような感じ。これならロングラインでもストレスなく飛ばせるし、パワフルな本流アマゴとのやり取りにも余裕ができるはず
だ。ズーム竿によくみられるがたつきもなく、また、4.5mもの長さがある割りに持ち重り感が少ない。強度を保ちながらも細身で軽く製造できるのは、シマ
ノの技術力の賜物だろう。ボクがテンカラを始めた十数年前の竿とは雲泥の差がある。昔は軽いやつを選ぶとすぐ折れるってのが相場だったもんね。
優れた道具というものは、創った人の思想というか情念というか、そういったものが宿るものである。カタログスペックだけでは言い表せられない何かがあると
思う。名称にも本流テンカラとあるくらいで、コンセプトがはっきりしている。本流でのロングライン操作に特化しているところが潔い。でもまぁ、そこは使い
方次第で本流に限らず一般的な渓流でも使えるはずだ。もっとも仕舞寸法が約90センチもあるから、ブッシュがきつい場所や急な岩場の遡行には辛いかもしれ
ないけど。あと、お値段もよく抑えたな、という印象。どんなにいい竿でも高くて買ってくれないようなら意味がないしね。
ああ、本流アマゴの活性が上がる季節が待ち遠しいなぁ。