テンカラーズ&木村一成写真事務所公式サイト アマゴンスキー on the web テンカラ雑記2016年版 その1

クラシックレベルラインテンカラ
2016.3.3・記

今回はたわごとですので、お暇な方はお読みください。

まずテンカラの話ではなく恐縮です。
昨年5月、生まれて初めてコンサートに出演して人前で歌をうたいました。
もっともソロではなく合唱団のうちの一人です。
曲はベートーヴェンの交響曲第九番「合唱付き」、いわゆるダイクです。
カラオケすら苦手なのに、よくぞ歌えたものです。
とても難しい曲で、家内ともども半年以上練習に通いました。
そのときの先生は、厳しい方でしたが情熱的な指導をしてくれました。

指導を受けながら、なるほどと得心することがありました。
まずは、楽譜に書かれていることからハミ出てはいけないのですね。
当たり前と思うでしょうが、ことはそう簡単ではありません。
まず、シロウトは楽譜どおりにすら歌えないのです。
なんとなく歌えるようになっても、コンサート本番まで次々と指導が入ります。
音の強弱、テンポ、曲の解釈、ベートーヴェンの気持ちはどうであったかなどなど。
最終的には本番の指揮者がオーケストラと合唱を合せてリハーサルをして仕上げてくれます。

ベートーヴェンが書いたように演奏することが、こんなに苦労するのかと思いました。
第九は古今東西、数えきれないほど演奏されてきました。
でも不思議なことに、ひとつとして同じ演奏はありません。
同じ楽譜から、どうしてこんなに違う演奏が生まれるのか。
名演も駄演も、元は同じ楽譜で演奏されているのです。

さて、クラシック音楽は100年も200年も演奏され続け、時代に飲まれることなく残ってきた音楽です。
では古色蒼然としてなんら進化していないのか?
そんなことはありません、楽器は改良され演奏方法も次々と研究がなされています。
今のオーケストラのほとんどはモダン楽器を使っています。
対して、古楽器という18世紀当時の楽器で演奏するスタイルが流行っていたりもします。
コンサートホールだって、近代的な音響設計の立派なものが数多く建てられています。
つまり、クラシックといえど、ある様式は守りながらも時代に合せて変化しつづけているのです。

と、なが〜い前置きになりました。
私のテンカラはクラシック音楽のようなスタイルになっているのでは、と思うのでこんなことを書き出しました。
周囲のテンカラ釣法が激変するなか、いまだに古典的な様式からハミ出ていないのです。
その様式というのは、サオ、イト、ハリの三物(さんもつ)だけで遊ぶこと。
なぁ〜んだ、普通のテンカラじゃん、と思われると思います。
でもあと10年したら、三物だけでテンカラやる人は少数派になっている気がします。
もはやクラシックになりつつあるのではないでしょうか。

しかし、クラシックというなら馬素とか竹竿とか本テグスでないと、という方もみえると思います。
クラシックテンカラは本来そういうものでしょうね。
私はカーボンロッドとフロロカーボンのレベルラインといった現代的な道具を愛用しています。
クラシックスタイルなのにモダンな道具立て、クラシックモダンテンカラ、・・・なんか変です。
そんなことを考えるうちに、自分の遊び方は「クラシックレベルラインテンカラ」というのが妥当かな思いました。
クラシックレベルラインテンカラ、なんかながいですね〜。
レベルラインで古典といえば、本当は竹株さんのナイロンハイループです。
古典中の古典、伝統芸能、重要無形文化財と呼びたくなります。
竹株さんご本人は天然記念物、いや失礼、テンカラ界の人間国宝のような方です。

テンカラは昔から十人十色、一人一派といわれています。
毛バリで釣ったら全部テンカラだ、と十把一絡げにした方がおられました。
ご年配の方なので達観してるなぁ〜と思いながらも、茫洋とした話に聞こえます。
有名な解剖学の先生が、解剖学とは名付けることと言われナルホドと思いました。
顔のどこかで切って名前を付けないと、オデコとアタマの違いは出てこないのです。
クラシックレベルラインテンカラも、呼び方はなんだっていいのですが名付けてやると存在感が出てきます。

さて、いろんなテンカラがあるけれども、意外と同じモノサシで見ているように感じます。
合理的なシステムのテンカラも、趣を重んじて風流に楽しむテンカラも、他人は同じモノサシで測ります。
釣りにおいて金科玉条とするそのモノサシは、間違いなく釣果です。
かつて私自身もそのモノサシの呪縛にありました。
釣果を得なくていいということではありません。
釣れない釣りは釣りではないのだから。
ただ、この釣果というものは数字に置き換えられます。
一匹で嬉しい人に、十匹のほうがスゴイという話をするからおかしくなります。
逆も同じで、数釣れない人が多く釣る人に文句をいう場合もモノサシは一緒です。
このモノサシで測るうちはいろいろとつまらないことや悲しいことが起きるものです。
私自身過去に残念なことが起きて、大事な友人が離れていきました。
0と1は無限大ほど違います、あるかないかでは大違いですね。
だからボウズは今でも確かにガッカリします。
でも、1と10は9の違いしかないのです。
私の場合はテンカラは趣味ですので、1でも2でもメチャクチャ楽しい。
そして他人と比較しないようになれば、ずっと楽しいのです。

まぁ、浦島太郎のようにテンカラ界の動向をよく知らないまま何年か経ちました。
その間に周囲のテンカラが変わり多様化しました。
いずれにせよ従来のクラシックスタイルは、キャスティングがキモといってもいいです。
キャスティングにはまだ奥行きがありますので、もうしばらくこのスタイルで遊べそうです。
技術論はここに書くと誤解も招くので割愛します。

近ごろ、そんなどうでもいいことをつらつら考えていました。
以上、浦島太郎のたわごとでした。

動画を一本UPしました、お暇な方はご覧ください。
クラシックレベルラインテンカラ 冬の管釣り 高解像度版

追伸
今年になって地球丸のMook本「山と釣り 2016」が発刊されました。
榊原正巳氏の頁に私が氏を撮った写真が載っています。
榊原さんのテンカラを見ていると、私が到達できていない世界があることを実感します。


去る2月20日(土)には、石垣テンカラ大王肝いりの「名古屋テンカラキックオフミーティング2016」が開催されました。
今回は小学生のテンカラ少年も参加し、次世代にもテンカラはつながるんだなぁ〜と感無量でした。
久々にお会いする方や初めてお会いする方、楽しい時間を有難うございました。





  

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